隣の研究室~とある大学院生の日記~

とある大学院生の日記(20)

<前回までのあらすじ>
山野、まだ新人学生とMTG中。
—————————————–
「じゃあ、次、今後の研究計画について話します」
山野はそういうと、再び書類に目を通し、説明をはじめた。
簡潔に話したつもりが、結局、さっきと同じく、
20分以上かかった。
「以上だけど、質問、ある?」
20分ぶりに、佐藤と宮本に目をやると、
先ほどと同様、二人とも、書類のあちこちを眺めている。
佐藤の視線は書類には合っておらず、
いたずらに右往左往しているだけのようであった。
「山野さん」
宮本が、書類に目を落としたまま、口を開いた。
「はい、なんでしょう」
山野の声は無意識にうわずってしまった。
「8ページ目の実験方法のところに、
『染色画像の観察は、位相差顕微鏡で行う。
共焦点レーザー顕微鏡が無いので、位相差で妥協』
とありますよね」
「はい」
「共焦点レーザー顕微鏡、所研究室にありますよ。
わたし、研究室見学にいったとき、見せてもらいました」
「ああ、知ってるよ」
「えっ、じゃあ使えるじゃないですか」
「いや、それはちょっと難しいんだ」
「なんでですか?」
「所教授は、うちの教授と仲が悪いらしくて」
「はあ」
「だから、ちょっと、借りるのは難しいんだ」
「えっ」
「いや、だから、教授との仲が……」
宮本は、山野をじっと見ている。
宮本の心の声が聞こえる。それは理由になってない
ですよね。
「山野さん」
宮本の声が、いつの間にかアニメ声でなくなってい
る。
「山野さんは、本当に、この研究を
やりたいと思っているんですか?」
心臓をギュッとつかまれたように、山野の動きが止
まった。
宮本は、山野をじっと見る。
そんな風に女性に見つめられるのは、初めてだった。
「……ちょっと、所研に、聞いてみるわ」
山野がか細い声でそういうと、
宮本は急にニッコリ笑って、
「そうしましょうそうしましょう」
と、いつものアニメ声で言った。
その後、今後のスケジュールを確認して、
「じゃあ、これで研究会を終わります」
と、はじめてのミーティングを締めたのは、
宮本だった。
(つづく)

<前回までのあらすじ>

山野、まだ新人学生とMTG中。

—————————————–

「じゃあ、次、今後の研究計画について話します」

山野はそういうと、再び書類に目を通し、説明をはじめた。

簡潔に話したつもりが、結局、さっきと同じく、

20分以上かかった。

「以上だけど、質問、ある?」

20分ぶりに、佐藤と宮本に目をやると、

先ほどと同様、二人とも、書類のあちこちを眺めている。

佐藤の視線は書類には合っておらず、

いたずらに右往左往しているだけのようであった。

「山野さん」

宮本が、書類に目を落としたまま、口を開いた。

「はい、なんでしょう」

山野の声は無意識にうわずってしまった。

「8ページ目の実験方法のところに、

『染色画像の観察は、位相差顕微鏡で行う。

共焦点レーザー顕微鏡が無いので、位相差で妥協』

とありますよね」

「はい」

「共焦点レーザー顕微鏡、所研究室にありますよ。

わたし、研究室見学にいったとき、見せてもらいました」

「ああ、知ってるよ」

「えっ、じゃあ使えるじゃないですか」

「いや、それはちょっと難しいんだ」

「なんでですか?」

「所教授は、うちの教授と仲が悪いらしくて」

「はあ」

「だから、ちょっと、借りるのは難しいんだ」

「えっ」

「いや、だから、教授との仲が……」

宮本は、山野をじっと見ている。

宮本の心の声が聞こえる。それは理由になってない

ですよね。

「山野さん」

宮本の声が、いつの間にかアニメ声でなくなってい

る。

「山野さんは、本当に、この研究を

やりたいと思っているんですか?」

心臓をギュッとつかまれたように、山野の動きが止

まった。

宮本は、山野をじっと見る。

そんな風に女性に見つめられるのは、初めてだった。

「……ちょっと、所研に、聞いてみるわ」

山野がか細い声でそういうと、

宮本は急にニッコリ笑って、

「そうしましょうそうしましょう」

と、いつものアニメ声で言った。

その後、今後のスケジュールを確認して、

「じゃあ、これで研究会を終わります」

と、はじめてのミーティングを締めたのは、

宮本だった。

(つづく)

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