隣の研究室~とある大学院生の日記~

とある大学院生の日記(19)

<前回までのあらすじ>
山野、新人学生とMTG中。
—————————————–

「えー、以上が僕の研究内容です」

山野はこれまでの自分の研究を説明し終え、
時計を見ると、14時55分だった。
20分以上、1人で喋っていたことになる。
鼻の下にうっすら汗をかいていることに気付いた。

佐藤と宮本に目をやると、
二人とも、書類のあちこちを眺めている。
山野の言葉を反芻し、理解しようと
努力している様子である。

山野が口を閉ざしたことで、
研究室がやけにしずかになった。
半分ほどあけた窓からやわらかい風が吹きこむ。

風上に座っている二人の方から、
香水のにおいが漂ってきた。
山野は一瞬ドキッとしたが、
それが佐藤がいつもつけている香水だと分かり、
がっかりした。

「何か質問ある?」

2人にどれくらい理解してもらえたかを知るために、
山野は質問をしてみた。

宮本は山野をチラッと見た後、
研究方法について質問をしてきた。
その質問が、山野の研究で最も重要な箇所
についてのものだったので、山野はちょっと驚いた。

「佐藤くんはどうよ」

佐藤は相変わらずページをあちこち見ながら、

「あのー、この2ページ目の真ん中に
『培養液を30ml追加』とありますけど」

「うん」

「ここの『ml』だけ、フォントがTimes New Romanじゃな
くてCenturyになってませんか?」

山野は書類に目をとおして佐藤の正しさを確認した後、
これから、学会で発表するときは、
佐藤君にスライドの最終チェックをしてもらおうと
心に決めた。

「じゃあ、次、今後の研究計画について話します」

(つづく)

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