隣の研究室~とある大学院生の日記~

とある大学院生の日記(16)

<前回までのあらすじ>
新人M1佐藤、無謀にも研究室見学で 説明を担当することに。

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新4年生は3つのグループに分かれ、それぞれが別のルートで、各研究室を見学する。 山野の研究室見学の時間は、10時、13時、15時の3回である。
「3回の説明で、学生全員が来るんですよね、  ということは、3回の説明のどこかで、  かならず、あのなんとか祭の女の子3人組が  訪れるってことですよね」

プレゼンテーションの原稿を最終確認しながらしきりに山野に聞いてくる佐藤。目の焦点は、原稿の文章にではなく、頭の中で妄想する女の子に合っているようだ。

「本当に大丈夫?」

不安になった山野が問いかけると、佐藤はムキになってまくしたてた。

「大丈夫ですって、俺はねえ、やるときゃやるんですよ。大学院入試のときだって、熱力学、満点だったんすよ。オットーサイクルは複合サイクル、サバテサイクルは等容サイクル、これですよ」

「それ、逆じゃね?等容サイクルはオットーサイクルの方だろ」

「えっ、サバテサイクルの方ですって」

「逆だよ逆、オッ等容サイクルって覚えてたもん、俺」

佐藤は信じられない、という目つきで ネット検索し、Wikipediaの関連ページを見た。

「まじすか、、、じゃあ俺の満点は一体、、、」

呆然とする佐藤を見た山野は、ここは励ましておいた方がいいだろうと判断した。

「まあ、偶然でも何でも佐藤君がウチにきて、僕は嬉しいからさ、がんばろうよ」

と、あまり脈絡のない励ましの言葉をかけてみると、 佐藤には意外と効いたらしく、 数分後には落ち着いて原稿の確認をはじめていた。 今度はちゃんと焦点は原稿に合っている。

しばらくすると、佐藤がぽつりと口を開いた。

「オッ等容サイクルって覚え方、ちょっと、恥ずかしくないですか?」

「その話、もういいから!」

10時になり、4年生がやってきた。

(つづく)

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