<前回までのあらすじ>
Aと山野は生協で夕食を食べることにした。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「いやー、夜8時なのに生協は盛況ですね」
山野は、この言葉を発した後で ダジャレになっていることに気付き、気まずい思いをしたが、 Aは何も気付いていない様子で、食堂内を物色している。
山野のいうとおり、生協は夜8時にも関わらず盛況だった。
食堂の顔ぶれ、および雰囲気から、 彼らの多くが、研究室の連れとともに、 実験の合間の栄養補給に来ていることが分かる。
山野はトレーを手に取ると、何の迷いも無く おかずコーナーに足を向けた。
「すいません、ささチーひとつ」
ササチーとは、ささみチーズフライのことである。 このメニューは、生協食堂の数あるメニューの中で 3年連続1位という圧倒的な人気を誇るメニューである。
彼が生協で注文をするおかずは、十中八九ササチーである。 それは、彼がササチーを好きなことももちろんあるが、 それにも増して、自分がササチーの人気を支えている という強い自負があるからだ。
かれは、ササチーが無名の頃から、 いちはやくササチーに着目し、ひたむきに 注文をし続けてきた。
それはまるで、今は有名になったアーティストを 路上ライブの時代からずっと見守ってきた、 古株のファンの心境に似ていた。
山野はササチーがメジャーになった今でも、 自分が注文することで、ササチーの人気が また一つ高まることにいわれのない誇りを感じていた。
このササチーが、後に、山野の研究に とんでもない事態を招くことを、 彼はこのとき、知る由もなかった。
(つづく)





Discussion
No comments for “とある大学院生の日記(13)”