<前回までのあらすじ>
Aに殴りかかるロバート。 そのとき、研究室の扉が開き、 秘書の里美が入ってきた。
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ガチャ、と里美が研究室に入ったとき、 Aはロバートの胸ぐらをつかんでいた。
ロバートは、Aの意外な腕力に内心戸惑いながらも、 里美のいる手前、平静を装い、Aに対し 「乱暴はいけません」とたしなめるように言った。
Aはロバートから離れ、一息つくと、うつむき加減で、 「里美さん、どうしたんですか、わざわざ実験室まで」 と言った。
里美は驚きのあまり、ドアを開けたときの姿勢で 突っ立っていたが、Aの声で我に返り、
「あっ、あの、Aさんが見積もりを出していた顕微鏡、 今メーカーから連絡があって、Aさんの希望額で 販売します、という連絡をもらったんです、 今日中に買うか買わないかの返事が欲しいらしくて、 それで、、、」
と、そこまでを一気に喋った。
喋っている間、里美はロバートから舐め回すような 視線を感じたが、気にしないことにした。
里美の言葉を聞いたAは、さっきまでのことを 全て忘れたかのようにさわやかな笑顔になり、 「そうですか!買う、買います、買ってください!」 と、カ行変換活用を練習中の中学生のように叫んだ。
里美はその変貌ぶりに、戸惑いと親しみを感じつつ、 「わかりました、ではすぐに返事をしておきますね」 と言った。
喋っている間、里美はロバートから舌舐めずりの ような視線を感じたが、気にしないことにし、 静かに実験室を後にした。
Aの、アメリカ人もびっくりの気持ちの切り替わりように、 そこにいた全員が、それまでの話を忘れたような気持ち になり、結局、学生管理の問題はうやむやのまま、 三々五々、実験室を後にした。
気付くと、実験室には、Aと山野の二人きりだった。
「さあ、山野君、実験だ」
(つづく)





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